藤原啓の略歴　(Fujiwara kei)

1899年2月28日	岡山県備前に生まれる。本名、敬二
1938年	万葉学者の正宗敦夫の勧めで備前陶芸を始め、三村梅景に師事する
1948年	国指定の丸技作家の資格を得る
1954年	岡山県指定無形文化財「備前焼」保持者に認定
1970年	重要無形文化財「備前焼」保持者（人間国宝）に認定
1972年	勲四等旭日章受章
1962年	プラハ国際陶芸賞受賞
1976年	備前市名誉市民
1983年11月12日	死去。勲三等瑞宝章受章

岡山県備前市穂浪出身の藤原啓は、農家の三男として生まれました。少年期は文学に没頭しており、1915年に短編小説が『文章世界』で1等を獲得し、1919年に上京して博文館に勤務しました。詩の執筆や早稲田大学での学びを経て、1922年に詩集『夕の哀しみ』を出版。博文館を辞めて作家活動を始めましたが、1937年に帰郷し、1938年から備前陶芸を始めました。金重陶陽や北大路魯山人からの指導を受け、古備前の技法を継承しつつも独自の作風を確立し、40歳で陶芸家として新たな道を歩み始めました。その作風は桃山時代の古備前技法を基礎としつつ、窯の中で生じる自然の変化を取り入れた近代的な造形が特徴です。師である金重陶陽とは対照的に、素朴で大らかな作品を制作し、伝統的な備前焼に新しい風を吹き込みました。彼の作品は後進の陶芸家たちにも大きな影響を与えました。

長男、藤原雄について

藤原雄は1932年に岡山県備前市で生まれ、1955年に明治大学日本文学科を卒業後、父から備前焼の技法を学びました。彼は1958年に日本伝統工芸展で初入選し、その後も多くの国内外の展示会に招待され、無釉焼締の備前焼を広めてきました。藤原雄の作品は古備前の伝統を基盤としながらも、新鮮で明快な感性が特徴です。力強い造形の壺や深鉢、独特の窯技による作品は多くの陶芸愛好家に親しまれています。また、海外での講義や実技指導を通じて、国際的な文化交流にも大きく貢献しています。

備前焼について

備前焼は、岡山県備前市の伊部地方で平安時代末期から生産されてきた陶芸で、釉薬を使わずに褐色の素地を長時間焼き締める特徴を持ちます。日用雑器から茶陶や徳利まで多岐にわたる作品が作られてきました。特に桃山時代には豪快な茶陶が、江戸時代初期以降は繊細な伊部手の作風に変わりましたが、大正末期には金重陶陽らによって土の味わいと窯変による芸術的な作風が復興し、現代の備前焼の主流となりました。現在、備前市には多くの個人作家がおり、「ヒヨセ」という土を使用し、薪の灰が生み出す「ゴマ」や「緋襷」、そして「牡丹餅」などの技法で多彩な作品を生み出しています。備前焼はその独特な味わいと地域特色で、日本の工芸史において重要な位置を占めています。

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