宇田荻邨の略歴　(Uda tekison)

1896年6月30日	三重県松阪市に生まれる。本名：善次郎
1913年	京都に移り菊池芳文、のち菊池契月に師事する
1914年	芳文の勧めで、京都市立絵画専門学校別科（現：京都市立芸術大学）入学
1918年	同校卒。在学中から甲斐庄楠音、岡本神草らと研究会「みつりつ会」に加わり、卒業後も制作を続ける
1919年	第1回帝展で「夜の一力」が初入選
1926年	第7回帝展で「淀の水車」が特選、帝国美術院賞を受賞
1929年	京都市立絵画専門学校助教授
1956年	画塾白甲社を創設
1967年	勲三等瑞宝章受章
1972年	松阪市名誉市民となる
1980年1月28日	死去。享年83

三重県で生まれた宇田荻邨は17歳で京都に移り、菊池芳文に学びました。1914年に京都市立絵画専門学校に入学し、1918年に師である芳文が亡くなった後、菊池契月に師事しました。第1回帝展で《夜の一力》（個人蔵）が初めて入選し、その後も帝展で入選を続け、第7回展では《淀の水車》（大倉集古館蔵）が帝国美術院賞を受賞しました。彼の作品は四条派の写生感覚を基礎に、京都の風趣を取り入れた清廉潔白な作品で人気を博しました。1936年には京都市立絵画専門学校の教授に就任し、戦後は日展を中心に活動を続け、《鴨川の夕立》（京都府立総合資料館蔵）や《清水寺》（京都市美術館蔵）など、京都を題材にした作品を描き続けました。

師、菊池芳文について

菊池芳文は1882年に第1回内国絵画共進会展に出品した「修学院夏雨図」が銅賞を受賞し、京都画壇・四条派の正統を受け継ぐ画家としてデビューしました。その後も1887年の第2回内国絵画共進会展で「花鳥」と「山水」が銅賞、1886年の京都青年絵画共進会展で「菊に雀」が第1席、1891年の日本絵画共進会展で「木曽山中」が2等賞、同年の日本美術協会展では「晩秋寝覚床図」が銅牌を受賞しました。また、1893年のシカゴ万国博覧会にも「青堤群鷺」を出品し、同門の竹内栖鳳、都路華香、谷口香嶠とともに「楳嶺門下の四天王」と称されました。

1903年には「春の夕・霧の朝」によって「花鳥画の芳文」と評価され、それ以降は多くの花鳥画を制作しました。1907年に文部省美術展覧会（文展）が創設されると、第1回で審査委員を務め、自らも「春秋花鳥」を出品しました。文展にはその後も出品し、特に1914年の第8回に出品した「小雨ふる吉野」ではその叙情的な表現が称賛され、「桜の芳文」とも称されました。

宇田荻邨の買取相場

日本画家の作品はその完成度によって価格が大きく変動します。描き込みが丁寧で展覧会などに出品された作品は、最高で20万円に達することもありますが、はがきサイズの小品や水墨画の作品は比較的価格が低くなる傾向にあります。

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