大橋翠石の略歴　(Ohashi suiseki)

1865年5月16日	美濃国安八郡大垣町（現・岐阜県大垣市）に生まれる。本名：卯三郎
1895年	第四回内国勧業博覧会に『虎図』を出展、褒状・銀牌を受賞
1900年	パリ万国博覧会で『猛虎図』が優等金牌を受賞
1901年	作品が宮内庁御用品となる
1904年	セントルイス万国博覧会に出展し、優等金牌を受賞
1905年	『雪中虎』が海軍連合艦隊司令長官の東郷平八郎から秋山真之に贈られ、日露戦争の日本海海戦で旗艦を務めた戦艦「三笠」に掲げられる
1910年	日英博覧会に出展し、優等金牌を受賞
1926年	名古屋松坂屋で大橋翠石絵画展覧会を開催
1927年	東京上野日本美術協会で翠石百幅展開催。「天覧余光耀九重」は明治天皇への献上作下図に推される
1945年8月31日	死去。享年81

日本画家の大橋翠石は、日本美術史において特別な存在です。明治33年のパリ万国博覧会で、日本人画家として唯一金メダルを受賞し、4年後のセントルイス万国博覧会でも連続して金メダルを獲得しました。これにより、翠石は当時世界で最も高く評価された日本画家の一人となりました。

大橋翠石は現在の大垣市に生まれ、東京で渡辺小華に師事して絵を学びました。しかし翌年、師と母を相次いで亡くし、帰郷します。その後、濃尾大震災で被災し、父と家を失いました。数々の不幸を乗り越え、虎の絵に力を見出し、研鑽を重ねて独自の画風を完成させました。

その後、療養のため神戸の須磨に隠遁し、動物の絵を描きながら一人で芸術を追求し続けました。後半生は画壇と距離を置いて過ごしたため、彼の芸術を知る人は少なくなりつつあります。しかし、生前は横山大観や竹内栖鳳と同等の評価を受けており、明治天皇、東郷平八郎、大隈重信など著名な人物が彼の絵を愛し、所蔵していました。

虎の画風の変遷

「虎の翠石」として名高いその画風は、主に４つの変遷をたどって来ました。

青年期から初期は、南画風の技法で虎の縞を描いて形を作っています。毛は基本的に白黒で描かれているため、全体が薄く白っぽく見えます。

中間期は、墨で縞を描く方法は変わらないが、地に黄色と金で毛描きをし、腹の部分には胡粉を使って白い毛を描いています。全体として黄色っぽく見えます。

晩年期は、虎の体に赤い彩色を施し、その上から金泥や胡粉で毛描きを加えているため、全体的に赤っぽく見えます。この時期の作品には「樹間之虎」「月下之虎」「山嶽之虎」などがあり、背景には樹木や岩山、笹などが重厚に描かれており、洋画の影響を受けたと考えられます。

最晩年は、地肌に赤や金で毛描きが施されるが、その量は控えめになっています。背景は晩年期より簡素化されています。

大橋翠石の買取相場

大橋翠石の作品は出来不出来によって大きく変わります。特に猛虎の絵や展覧会への出品作は200万円までの最高値にいくこともありますが、はがきサイズの小品や水墨画の作品は価格が低くなる傾向にあります。

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