荻須高徳の略歴　(Nakane hiroshi)

1901年11月30日	愛知県に生まれる
1922年	東京美術学校西洋画科に入学
1927年	東京美術学校卒業。フランス留学する
1928年	サロン・ドートンヌに初入選
1956年	フランス政府からレジオン・ドヌール勲章を授与される
1972年	勲三等旭日章受章。中日文化賞受賞
1974年	パリ市よりメダイユ・ド・ヴェルメイユを授与
1981年	文化功労者
1982年	フランス国立造幣局が、荻須高徳の肖像を浮彫にしたメダイユを発行する
1986年10月14日	パリのアトリエで制作中に死去。享年84。文化勲章受章

1901年に愛知県中島郡（現・稲沢市）で地主の家庭に生まれた荻須高徳は、東京美術学校（現在の東京藝術大学）西洋画科を卒業後すぐにフランスに渡ります。荻須はパリでの活動が長く、初期の作品はヴラマンクやユトリロの影響を受けた荒々しいタッチが特徴でしたが、後に穏やかなタッチでパリの都市風景を描くようになりました。

1928年にはサロン・ドートンヌに初めて入選し、1934年にはジュネーヴで初個展を開催。この時期から作風は落ち着いた色調と静けさを持つものに変化し、1936年にはサロン・ドートンヌの会員に推挙されましたが、1939年には戦争の影響で一時帰国。帰国後は新制作派協会の会員となりました。戦後、1948年には日本人画家として初めてフランス入国を許可され、再びパリで活動を続けました。1981年にはフランス国立造幣局が荻須の肖像メダイユを発行し、シラク・パリ市長から「最もフランス的な日本人」と評されました。文化功労者に選ばれ、10年ぶりに帰国した際には稲沢市を訪れ、荻須記念美術館の建設地を視察しました。

1986年10月14日にパリのアトリエで倒れ、享年84歳で死去。文化勲章は死後追贈され、墓はパリのモンマルトル墓地にあります。

荻須高徳の作風

荻須高徳といえば、主にパリの風景を描いた絵画作品が思い浮かびます。人物画や静物画よりも、ヨーロッパの風景を描き続けることに専念しており、ヴラマンクなどのフォービズム（野獣派）の影響を受けた荒々しいタッチでパリの喧騒を表現しています。そのため、人物の描写がほとんどなく、静寂や孤独、虚無感を感じさせる作品が多いです。荻須の作品は、鮮やかな暖色使いに定評があり、見ると温かい気持ちになる柔らかな作品が特徴です。

初期の作品は若さと勢いに溢れた荒々しいタッチが目立ちましたが、後期には優しく爽やかなタッチに変わり、観る者の心を和ませる作品が増えました。例えば、「サンタ・マリア・マッダレーナ広場」は赤とベージュ系の色彩で描かれ、哀愁と情緒を感じさせる構図が特徴です。また、パリ特有のグレーがかったブルーの空が、切なさを表現しつつも、日常の優しさを感じさせる作品です。

荻須高徳は、ヴラマンクやユトリロの影響を受けているとされますが、日本人特有の感性で描かれたパリの町並みは、荻須独自の視点で表現された造形美が溢れる作品となっています。

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