中村岳陵の略歴　(Nakamura gakuryo)

1890年3月10日	静岡県下田市生まれ。本名：恒吉
1902年	野沢堤雨や川辺御楯に師事
1908年	東京美術学校日本画科・選科に入学、主席で卒業
1914年	今村紫紅と赤耀会を設立する
1926年	日本美術学校の教授となる
1940年	法隆寺金堂壁画模写主任を務める
1958年	日展常務理事
1959年	大阪四天王寺金堂壁画を制作
1962年	文化勲章受章。文化功労者顕彰
1969年11月20日	死去。享年78

中村岳陵は明治23年に静岡県下田で生まれ、10歳で上京。13歳で野沢堤雨に師事し琳派を学びました。15歳のときには土佐派の川辺御楯のもとで伝統的な日本画の技法を修得。明治41年に東京美術学校日本画科選科に入学し、紅児会に参加して若手作家たちと新しい芸術に共鳴し、大きな情熱を注ぎました。明治45年に美術学校を卒業しましたが、在学中に飛び級するなど、その才能が際立っていました。卒業した年に「乳糜供養」が第6回文展に初入選し、大正3年には今村紫江や速水御舟らと赤燿会を創立。再興第2回院展には「薄暮」を出品し、日本美術院の同人となりました。その後、院展の中心作家として活躍しましたが、戦後は脱退し、日展に所属して活動を続けました。この間、六潮会を結成し、法隆寺壁画の模写主任を務め、大阪四天王寺全堂壁画を描くなどし、朝日文化賞や毎日芸術大賞を受賞しました。昭和37年には文化勲章を受章し、現代日本画壇の重鎮として華やかな足跡を残しました。彼の作品は、近代西欧絵画の理解をもとに日本絵画への新たな要素を取り入れる試みを続け、常に意欲的な姿勢を示しました。

中村岳陵の作風

中村岳陵は、江戸琳派の伝統を基盤にしながら、その技術を深く学び、緻密な写生を重んじる日本画を追求していました。しかし、彼はそれにとどまることなく、油絵の要素を取り入れることで、従来の日本画に新たな風を吹き込みました。この革新により、彼は独自の「新しい画風」を確立しました。従来の日本画ではあまり取り扱われなかった裸婦などの画題にも挑戦し、日本画の表現の幅を広げています。

岳陵の作品は、色彩に特に優れており、彼は「色彩画家」としても知られています。豊富な色を駆使しながらも、決して派手になることなく、落ち着いた穏やかな色調で作品を仕上げるその手法は、見る者に深い印象を与えます。彼の色彩感覚は、琳派の伝統に根ざしつつも、現代的な感性と技術を融合させたものであり、その独自性が高く評価されています。

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