元永定正の略歴　(Motonaga sadamasa)

1922年11月26日	三重県に生まれる
1944年	この頃から濱邊萬吉に洋画を習う
1955年	具体美術協会会員となる
1957年	ミッシェル・タピエとの交流が始まる。元永定正個展開催
1960年	ニューヨークのマーサ・ジャクソン画廊と契約
1964年	第6回現代日本美術展で優秀賞受賞
1983年	第2回芸術文化振興協会賞、第15回日本芸術大賞受賞
1986年	兵庫県文化賞受賞
1988年	フランス政府より芸術文芸シュバリェ賞受賞
1991年	紫綬褒章受章
1997年	勲四等旭日小綬章受章
2002年	三重県民功労賞文化賞受賞
2011年10月3日	死去。享年88

元永定正 ― 色と形で遊ぶように、世界を描いた画家

元永定正（もとなが さだまさ）は、学生時代より働きながら創作を続け、芦屋市展への出品をきっかけに美術の道へ進みました。若い頃は漫画家を志して漫画雑誌へ投稿していましたが、のちに濱邊の影響を受けて油彩画に取り組み、三重県総合美術展で奨励賞、西宮市美術展を経て、1953年の第6回展ではフォーヴィスム風人物画《黄色の裸婦》によってホルベイン賞を受賞しました。

1955年、吉原治良に導かれ具体美術協会に参加。第8回展に出品した《寶がある》は吉原から高く評価され、その後は中心的メンバーとして前衛的な活動を展開します。明快な色彩とユーモラスな構成で注目され、数々の美術賞を受賞。1997年には旭日小綬章を受章し、その功績は国内外で大きな評価を得ました。

1960年には美術評論家ミシェル・タピエの紹介によりニューヨークの画廊と契約。翌1961年にはトリノの国際美学研究センターとも契約し、1966年にはジャパン・ソサエティの招聘で渡米。海外で新たな制作スタイルを確立しました。

代表作のひとつ《ながれとかたち》には、原爆がもたらした悲劇と広島の復興、そして「平和を信じる人間の力」が込められているとされます。明るく遊び心に満ちた画風の奥に、自然の大きな力や人間の深い感情を描き出した作品世界は、多くの人々に親しまれました。

1970年代以降は絵本制作にも積極的に取り組み、英文絵本『ポアン・ホワンけのくもたち』、谷川俊太郎の文による名作『もこ もこもこ』などを発表。独自の色彩感覚と造形センスが高く評価され、子どもから大人まで幅広い世代を魅了しました。

1980年代以降も創作と発表を精力的に続け、具体美術再評価の機運が高まる中、国内外の展覧会に参加。2012年、グッゲンハイム美術館での展覧会に新作が展示され、これが生涯最後の作品となりました。晩年には郷里・三重県での回顧展をはじめ、各地の美術館で個展が開催され、その業績が改めて再評価されています。

2011年、元永定正は88歳で逝去。明快で楽しい色彩の裏側に、深い哲学と人間へのまなざしを宿した、戦後日本を代表する芸術家でした。

具体美術協会について

1954年8月、吉原治良の指導のもと、関西の若手前衛作家たちが集まり、具体美術協会が結成されました。具体美術協会は、戦後の美術運動の中で、師弟関係を軸とした異色のグループでした。吉原の「人の真似をするな。今までにないものをつくれ」という指導方針のもと、若い作家たちは次々と革新的な作品を発表。野外展「真夏の太陽にいどむ野外モダンアート実験展」や国際アドバルーン展など、斬新な試みを行い、フランスの批評家ミシェル・タピエによって「アンフォルメルの日本における一例」として海外でも評価されるようになりました。具体は、自然現象を表現するために斬新な素材や技法を駆使し、やがて流動的な抽象絵画で注目を集めるようになります。後期には、擬態語や擬音語を取り入れたコミカルな抽象画を発表し、絵本制作にも積極的に取り組みました。

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