守屋多々志の略歴　(Moriya tadashi)

1912年8月10日	岐阜県大垣市に生まれる。本名：正。生後100日目、分家守屋貞吉（大垣市桐ヶ崎町の米穀商）へ養子に出される
1930年	上京し、前田青邨に師事
1931年	東京美術学校（現：東京藝術大学）日本画科に入学
1936年	東京美術学校を卒業。卒業製作「白雨」が川端玉章賞を受賞
1943年	第30回院展に「陸奥の宿」が入選、この年から雅号を「多々志」とする
1954年	総理府留学生としてイタリアに2年間留学
1967年	法隆寺金堂壁画再現模写開始。第十号壁「薬師浄土」を担当
1984年	ローマ教皇庁より聖シルベストロ教皇騎士団勲章受章
1985年	第70回院展出品作品「愛縛清浄」にて内閣総理大臣賞受賞
2001年	文化勲章受章。大垣市守屋多々志美術館が開館
2003年12月22日	死去。享年91

守屋多々志は当初、油彩画に取り組んでいましたが、雑誌で見た「平治物語絵巻」の甲冑をまとった武者たちの群像に触発され、東京へ上京して歴史画の名手、前田青邨のもとで書生として学び始めました。彼は「源氏物語絵巻」や「餓鬼草紙」などの古典絵巻を模写し、技術を磨きました。東京美術学校日本画科に進学し、1936年の卒業制作「白雨」で川端玉章賞を受賞。翌年、現役兵として満州やハルピンに駐屯し、1941年には海軍軍令部で小説家の吉川英治と共に海軍史の編纂に携わり、海軍記念館に「蒙古襲来」の壁画を制作します。1950年には『週刊朝日』で連載された吉川英治の「新平家物語」の挿絵を担当し、黒沢明の映画「羅生門」の衣装デザインも手がけました。1954年には総理府留学生としてイタリアに2年間滞在し、ローマやポンペイで壁画を模写し、地元でスケッチ展を開催。1960年には鎌倉円覚寺金堂の天井画「白龍」を、1967年には法隆寺金堂壁画の再現模写事業に参加し、「薬師浄土」の壁画を制作。1972年には文化庁から高松塚古墳壁画の模写を委託され、1976年には飛鳥保存財団の依頼で高松塚壁画展示の模写を総監督として制作。彼の経歴には、その後も多くの受賞歴が含まれており、日本の歴史画や文化に大きく貢献しました。

守屋多々志の作風

昭和から平成にかけて日本美術院で活躍した守屋は、太平洋戦争に従軍した期間やイタリア留学を除き、ほぼ毎年作品を出品していました。守屋の絵画は、歴史と古典に対する深い造詣を基に、歴史人物を堅実な構成で表現する「歴史画」を中心に描かれています。また、彼の知識と技術は小説の挿絵、舞台美術、衣装デザインなど、歴史的考証が求められる分野でも評価されました。

イタリア留学前は、日本の伝統的な大和絵のスタイルを意識して描いていましたが、留学後は西洋画の影響を受けた重厚なタッチで描き、その後も厚塗りの技法を多用しました。昭和40年以降は、武者絵を中心に描きつつ、金泥を背景に用いるなど華麗な作品も制作しました。しかし、昭和57年頃からは黒を多用し、直線で画面を区切る技法や独特の遠近感を持たせた暗めの作品が増えました。

守屋多々志の買取相場

守屋多々志の作品はその完成度によって価格が大きく変動します。描き込みが丁寧で展覧会などに出品された作品は、最高で20万円に達することもありますが、はがきサイズの小品や水墨画の作品は数千円～数万円と比較的価格が低くなる傾向にあります。

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