木村武山の略歴　(Kimura buzan)

1876年7月3日	茨城県に生まれる。本名：信太郎
1891年	東京美術学校普通科入学、川端玉章の画塾・天真社で学ぶ
1896年	日本画研究科へ進む。日本絵画協会第一回展で二等褒状受賞
1897年	平泉中尊寺金色堂修復に助手として参加
1906年	日本美術院の五浦移転に際し、一家で同行する
1914年	日本美術院を再興
1937年	脳内出血で倒れ、右手の自由が利かなくなる
1942年11月29日	死去

明治9年、茨城県笠間市で旧笠間藩士・木村信義の長男として生まれた木村は、12歳頃に「武山」という号を使い始めました。この号は、笠間市にある象徴的な佐白山の別称「阿武山（おたけ）」に由来しています。明治23年、西茨城連合高等小学校を卒業後、上京して東京開成中学校に入学しますが、翌年には東京美術学校普通科に編入。そこで下村観山の強い影響を受け、生涯にわたって観山とともに画家としての道を歩むことになります。

日露戦争中の明治37年には、陸軍歩兵中尉に任官。同年、五浦移転に観山とともに同行し、この時期に多くの代表作を生み出しました。また、この頃から仏画の制作にも力を入れ始めます。大正3年、横山大観や観山とともに日本美術院を再興し、経営者、評議員、同人として活動しました。昭和12年に脳内出血で倒れ、右手が不自由になったため、左手で絵を描くようになり「左武山」と呼ばれるようになります。昭和17年、喘息のため死去。

初期の作品は歴史画が多く、25歳頃から花鳥画を中心に描くようになります。大正時代には琳派の手法を取り入れた壮麗な作風で知られ、観心寺の如意輪観音像に感銘を受けたことで、晩年には仏画に力を注ぎました。日本美術院を代表するカラリストとして、卓越した色彩感覚を評価されました。

下村観山について

下村観山（1873年〜1930年）は、紀州徳川家に代々仕える能楽師の家系に生まれました。幼少期から狩野芳崖や橋本雅邦に師事し、狩野派の技法を習得。1889年には、東京美術学校の第1期生として入学し、同級生には横山大観、1年後輩には菱田春草がおり、校長の岡倉天心から多くの影響を受けました。卒業後は助教授として教鞭を執りますが、天心排斥の騒動をきっかけに辞職し、日本美術院の創立に参加。以降は、日本美術院を代表する画家として、新しい日本画の創造に尽力しました。彼の作風は、狩野派の厳格な様式を基盤としつつ、やまと絵の優美な線と色彩を深く探求し、さらに英国留学や欧州視察での西洋画研究の成果も取り入れ、気品ある穏やかな独自の画風を確立しました。

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