ベルナール・ビュッフェの略歴　(Bernard Buffet)

1928年7月10日	工場経営者の父のもとパリに生まれる
1943年	パリ国立高等芸術学校に入学
1948年	パリで最も権威のある新人賞・批評家賞を「ふたりの裸の男」で受賞。以後、世界各地で個展が開催される
1951年	代表作「キリストの受難」三部作を制作
1952年	リトグラフを始める
1955年	『コネッサンス・デ・ザール（芸術の知識）』誌企画の「戦後の画家10傑」で1位に選ばれる
1959年	神奈川県立近代美術館で、日本最初のビュフェ展が開催される
1973年	静岡県にベルナール・ビュフェ美術館が創設される
1975年	フランス・アカデミー会員となる
1980年	ベルナール・ビュフェ美術館の招待により初来日
1993年	レジオン・ドヌール勲章のオフィシィエの称号を受ける
1999年10月4日	自ら命を絶つ。享年71歳

ベルナール・ビュフェは、フランスを代表する画家であり、第二次世界大戦後の具象絵画を代表する存在です。彼の生涯は、芸術への情熱、個人的な挑戦、そして彼独自の画風の追求によって彩られました。

ビュフェは1928年、パリにて誕生します。父は多忙な工場経営者であり、家庭内での父親の存在は遠いものでした。ビュフェにとっての心の支えは母親でしたが、彼が10代の時に母を亡くし、孤独と対峙する時間が増えます。この孤独が、彼がキャンバスに向かい続ける原動力となるのです。1943年にはパリ国立高等芸術学校に入学し、若き日のビュフェは絵画への深い情熱をさらに育むことになります。

1948年、ビュフェはパリで最も権威のある新人賞、批評家賞を受賞し、一躍脚光を浴びます。彼の作品は硬質で鋭い太い針金のような輪郭線と、モノトーンに近い色彩で知られており、これらは彼の独自のスタイルを形成していました。その画面には、人物の不安げな表情などが描かれ、第二次大戦後の荒涼とした心象風景を表現していました。彼の作品の多くは、最愛の妻アナベルをモデルにした女性像が特徴的です。

ビュフェは油彩画だけでなく、優れた版画も多く制作しています。1971年にはフランスの名誉あるレジオン・ドヌール勲章を受章し、1974年にはアカデミー・フランセーズの会員となるなど、彼の芸術への貢献は幅広く認められました。しかし、彼の人生は孤独との闘いでもありました。最愛の妻アナベルと共に生涯を送りながらも、彼の内なる孤独が完全には癒されることはありませんでした。晩年はパーキンソン病との闘病生活を送り、1999年、71歳でこの世を去りました。

ベルナール・ビュッフェの画風

ビュッフェは、黒の描線を大胆に使用して孤独や虚無感、喪失感を描き、第二次世界大戦後の芸術界に大きな影響を与えた20世紀の代表的な画家の一人です。彼は激動の時代を過ごし、16歳で唯一の理解者であった母親を失いました。

このような苦悩や悲哀は、ビュッフェの作品に独特の「暗さ」として表れています。彼の風景画は寂寥感を、人物画は物憂げな表情を描き、戦後の荒廃した社会に生きる人々に共感を呼びました。20代で早くも評価を確立したビュッフェは、1999年に自ら命を絶つまでスター画家として活躍し、数多くの名作を残しました。

ビュッフェは油彩画だけでなく、銅版画やリトグラフを用いた版画も制作しており、版画は彼の芸術表現の重要な手段でした。版画の独特の質感や手作業の工程に深い愛情を持ち、生涯を通じて多くの版画作品を発表しました。リトグラフ（石版画）とは、ギリシャ語で「石」を意味する "lithos" に由来する名前です。その名の通り、平らな石の表面に描画し、印刷する版画の一種です。現在では金属板なども使用されますが、基本的な原理は同じです。版面を彫らずに平らなままで描き、そのまま印刷するため、「平版」とも呼ばれます。

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