山本雄一の略歴（Yamamoto yūichi）

1935年	人間国宝である山本陶秀の長男として岡山県に生まれる
1959年	陶芸の道に入り、父・陶秀に師事する
1977年	金重陶陽賞受賞
1981年	岡山県文化奨励賞受賞
1995年	備前焼の技法｢伝統と創造｣を出版
1998年	紺綬褒章授章
1999年	｢備前緋襷八角鉢｣がフランス国立セーブル陶磁器美術館に、｢緋襷広口花器｣｢緋襷丸花瓶｣が宮内庁に所蔵される
2005年	伊勢神宮へ｢緋襷丸花瓶｣｢茶碗｣を献納

岡山県の備前焼の地に、伝統と革新を両輪にして歩んできた陶芸家がいます。山本雄一氏。昭和10年生まれの彼は、備前焼の人間国宝として名を馳せた山本陶秀の長男としてこの世に生を受けました。

幼少期から轆轤の音に親しみつつも、すぐに陶芸の道に進んだわけではありません。若き日の雄一氏は、まず機械工学を学び、エンジニアとして社会に出ます。その後、24歳で本格的に陶芸の道へ。ここからが、山本雄一という陶芸家の真骨頂です。

彼の陶芸には、技術者としての確かな目と手が息づいています。たとえば、静かで滑らかな回転を生む無段階変速の轆轤（ろくろ）や、粉塵を抑える湿式製土機、さらには自動制御の電気窯・ガス窯などを独自に考案。焼き物の世界に、工学の知見を融合させる姿勢は、まさに現代作家ならではの在り方です。

そんな現代的な設備を取り入れつつも、山本氏が生み出す作品は、どこか古備前の香りがします。それもそのはず、彼は古備前の鑑定にも携わり、焼き物の歴史と文化に対する深い造詣を持っているのです。

山本氏が得意とするのは、緋襷（ひだすき）や緋紋（ひもん）と呼ばれる焼き色。中でも「緋紋」は、彼の独創による技法で、藁からアルカリ分を抽出してまるで絵具のように彩色を施すというもの。焼き物の常識に挑むような試みにも、彼の理知と情熱が宿ります。

また、成形はすべて轆轤によって行われますが、山本氏の茶碗には不思議と手捏ねのような温かみが漂います。これは轆轤で整えた後、内側も外側も削って仕上げるという、非常に繊細な技から生まれるものです。

その実績は数々の賞に裏付けられています。金重陶陽賞、文部大臣奨励賞、総理大臣賞、山陽新聞文化功労賞、田部美術館大賞など、華々しい受賞歴を誇り、紺綬褒章も授与されています。作品はフランスの美術館や宮内庁にも収蔵され、ニューヨークやワシントンでの個展も成功を収めました。

現在は、岡山県指定無形文化財保持者として、また日本工芸会正会員・備芸会会長として、伝統の技と精神を次の世代へと繋ぐ活動にも尽力しています。

「常に新しい技術や時代感覚を取り入れ、より豊かにして次代に伝える。それが伝統を継承するということです」

そう語る山本雄一氏の作品には、理と美、伝統と革新が織りなす調和があります。まるで、静かに燃える窯の奥からそっと語りかけてくるような――そんな温もりと凛とした品格が、彼の焼き物には宿っているのです。

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