恒岡光興の略歴（Tsuneoka mitsuoki）

1939年	三重県に生まれる
1962年	立命館大学卒業。百五銀行に勤務
1970年	滋賀県立信楽窯業試験場研修課程修了、日根野作三に師事
1975年	東海伝統工芸展入選。以降、入選を重ねる

三重県伊賀市の静かな町、阿山。ここで約120年にわたり続く「恒岡精渥場」は、木灰や藁灰、長石を使った伝統釉薬を製造してきた釉薬専門の家系です。その五代目を継ぐのが、伊賀焼作家としても知られる恒岡光興さんです。

昭和14年生まれの恒岡さん。立命館大学を卒業後、銀行員として働いていました。しかもその銀行は、奇しくも陶芸界の巨匠・川喜田半泥子が関わった百五銀行だったのです。その当時は陶芸の世界に足を踏み入れることなど想像もしていなかったそうです。

しかし、「釉薬の伝統が途絶えてはいけない」という声に背中を押され、銀行を退職。釉薬の勉強をするため、信楽窯業試験場で学び直し、釉の調合研究に没頭します。窯元へ伝える際に分かりやすいよう、茶碗に釉をかけて焼いたことが、のちの作陶へとつながるきっかけになりました。

本格的にやきものに向き合い始めたのは40歳近くになってから。日根野作三氏に師事し、作家としての道を歩み始めます。その作風の中心には、いつも「伊賀焼」がありました。

「伊賀と信楽は見分けにくい。でも茶陶の世界では“焦げ・ビードロ・緋色”の三位一体で見分けられるんです」
この言葉の通り、恒岡さんの伊賀焼には、自然釉が流れ、炎の痕が残る、まさに古伊賀そのものの景色があります。穴窯には中国・景徳鎮で見た単窯式の構造を取り入れ、伊賀萩や古伊賀写など、多様な表情を見せています。

川喜田半泥子の作品に感銘を受け、「半泥子はどんな気持ちでろくろを回していたのだろう」と思いを馳せながら、今日も静かに土と向き合います。「年を重ねて、ようやく“枯れた手”で作れるようになってきた」と語る恒岡さんの茶碗には、時間をかけてしか生まれない、深みと品格が宿ります。

伊賀の土に立ち、釉を探り、手を重ねて生まれた焼きもの。それは派手さこそなくても、しみじみと心に染み入る――まさに、人生と呼ぶにふさわしい器たちなのです。

査定、買取のご相談はこちらから0120-772-316買取、査定はお気軽にご相談ください。

メール・写真でのお問い合わせはこちら MAIL：santouka@tanizaki-art.com

三冬花で買取できる美術品や骨董品

絵画

掛け軸

古美術品