坪島𡈽平の略歴（Tsuboshima dohei）

1929年	大阪府で呉服商を営む家に生まれる
	大阪市立錦城商業学校卒業
1946年	川喜田半泥子に師事
1949年	半泥子より「𡈽平」の号を受ける
1963年	川喜田半泥子の死後、廣永窯の製作責任者となり窯を継承
1999年	古希を記念して横浜・大阪の百貨店で展覧会を開催
2013年	死去

津市の郊外、関林池のほとりに広がる約二万坪の窯場「廣永窯」。まるで“陶源郷”と呼ぶにふさわしいこの地で作陶を続けてきたのが、陶芸家・坪島𡈽平さんです。生まれは昭和4年、大阪。もともとは呉服商の家に育ち、戦後は家族の疎開先であった津市分部広水へ移り住みました。

そこで運命的に出会ったのが、数寄の巨人・川喜田半泥子でした。まだ17歳の少年だった𡈽平さんは、志すでもなく半泥子のもとに弟子入りします。当時、半泥子はすでに67歳。師の傍を片時も離れず、やきものの技法だけでなく、人としてのあり方や哲学までも学び取りました。

昭和24年には、半泥子から「𡈽平（どへい）」の号を授かります。その後も修行を重ね、昭和38年には師の死を受けて廣永窯を継承。半泥子が作った“光悦の鷹ヶ峰を思わせる”窯場で、静かに、しかし力強く、自身の創作を深めていきました。

「半泥子から抜け出るまでに二十年かかった」と𡈽平さんは語ります。作品に師の影を残しつつも、そこから自分自身の表現を見出すまでには、やはり長い時間が必要だったようです。

𡈽平さんの作品は、染付・赤絵・志野・織部・黄瀬戸・伊賀・唐津・高麗・焼締、さらには磁器に金彩を合わせた象嵌など、まさに多彩。粗い土をひねり上げたような力強い花入れもあれば、潔い白を求めた磁器もあります。

「着物と同じで、その時の気分で織部にも粉引にもなればいい。こだわらないことが大事」。これは、半泥子から教えられた信条でもあります。

いくら真似ても、哲学がなければただの模倣でしかない。茶碗に本当の味わいを宿すためには、形ではなく「人」が問われる。𡈽平さんの作品には、そんな精神性と、濶達さ、そして心に沁みる柔らかさがあります。

まさに、茶と禅がひとつになった「茶禅一如」の境地を、やきものの上に表したような存在。それが坪島𡈽平の器です。

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