田村耕一の略歴　(Tamura kouichi)

1918年6月21日	栃木に生まれる
1946年	松風工業株式会社松風研究所に入所、富本憲吉に師事
1949年	佐野市久保町に薪窯を築く
1957年	日本陶磁協会賞受賞
1960年	第7回日本伝統工芸展で奨励賞受賞
1967年	東京藝術大学助教授となる。トルコのイスタンブール国際陶芸展にてグランプリ金賞を受賞
1968年	第3回ジャパン アート フェスティバル「国際芸術見本市アメリカ巡回展」に2ヶ月間派遣、陶芸を指導する
1970年	栃木県文化功労賞受賞
1975年	日本陶磁協会賞金賞受賞
1977年	東京藝術大学教授に就任
1983年	紫綬褒章受章
1986年	重要無形文化財「鉄絵」の保持者に認定
1987年1月3日	死去。勲三等瑞宝章受章

陶器に鉄絵で文様を描く分野から初めて人間国宝に認定された田村は、昭和16年に東京美術学校工芸科図案部を卒業し、大阪で楽焼を学びましたが、翌年応召されました。戦後の昭和20年に京都市の松風工業株式会社松風研究所に入所して陶磁器の本格的研究を開始し、富本憲吉に師事しました。昭和23年に栃木県佐野市に帰り、赤見窯の築窯に加わりました。翌年新匠工芸会展に出品し、昭和25年には浜田庄司の勧めで栃木県窯業指導所の技官となり、ココ工芸の結成に参加、その後、生活工芸集団の結成にも加わりました。

昭和31年と33年には現代日本陶芸展で朝日賞を受賞し、昭和32年には日本陶磁協会賞を受賞しました。さらに昭和35年と翌年には日本伝統工芸展で奨励賞を連続受賞し、昭和37年に日本工芸会の正会員となりました。この間、鉄絵の技法を開発し、銅彩を用いた創造性豊かな作風を展開しました。昭和42年にはトルコ・イスタンブール国際展で金賞を受賞するなど国際的な評価も得ており、昭和59年にはミュンヘンで個展を開催しました。昭和42年に東京芸術大学の助教授に、昭和51年に教授に就任し、昭和60年に停年退官して名誉教授となりました。昭和61年には国指定重要無形文化財「鉄絵」の保持者に認定されました。また、日本工芸会副理事長や佐野市名誉市民も務めました。

鉄絵について

鉄絵（てつえ）とは、鉄分を含む顔料を用いて筆で文様を描く技法のことです。この顔料は広範囲で産出されるため入手しやすく、鬼板や水打などの名で知られています。中国では磁器の創始とともにこの技法が始まり、宋時代から元時代にかけて広く行われ、特に磁州窯（じしゅうよう）で民衆の日用の器に優れた作品が作られました。

鉄絵の技法は朝鮮、ベトナム、タイ、そして日本にも伝わりました。朝鮮では高麗時代に鉄絵で文様を描いた青磁が作られ、朝鮮時代には鉄絵粉青が鶏龍山の名で親しまれました。また、白磁に鉄絵具で文様を描く技法は鉄砂と呼ばれています。日本では銹絵と呼ばれ、志野や織部にも鉄絵の装飾が施されています。

染付や青花のような細密な描写は見られないものの、鉄絵には量産品ゆえの勢いのある筆使いや民窯ならではのユーモラスな表現があり、独特の魅力があります。また、各地で作られた鉄絵に共通点が見られることも興味深い点です。

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