玉置保夫の略歴　(Tamaoki yasuo)

1941年	岐阜県多治見市の代々続く窯元の家に生まれる
1960年	県立多治見工業高校図案化を卒業
1963年	多治見市美術展で志野花器が最高の市展賞受賞
1965年	第十二回日本伝統工芸展で鉄釉花器で初入選
1995年	多治見市芸術文化部門で功労表彰
2002年	織部で多治見市指定重要無形文化財保持者に認定
2008年	岐阜県重要無形文化財（織部）保持者に認定
2009年	高島屋大阪・岡山・米子店で「岐阜県重要無形文化財保持者認定記念展」を開催
2012年	高島屋岐阜店で開店35周年記念展個展を開催
2013年	名古屋丸栄で作陶50周年展を開催

玉置保夫は岐阜県多治見市市之蔵町にある、代々続く窯元の家に玉置謙一氏の六男として生まれました。県立多治見工業高校の図案科を卒業し、当初は長男でなかったため家業を継ぐつもりはありませんでした。高校ではグラフィックデザインを学び、美術大学への進学を目指しましたが、受験に失敗します。その浪人期間中に東京の展覧会で桃山時代の美濃織部と出会い、その美しさに深い感銘を受け、翌年には県の陶磁器試験場に入所しました。そこで、五代加藤幸兵衛と技師の加藤孝造に師事します。

玉置は自由で斬新な織部の精神を受け継ぎつつ、現代的なデザインと色彩を取り入れた「今織部」を作り出しました。彼は織部に限らず、志野や黄瀬戸などの陶芸でも独自のスタイルを追求し、美しいグラデーションや曲線、図形を駆使した革新的な作品を生み出しています。しかし、その根底には織部の伝統がしっかりと息づいています。

織部焼について

織部焼は、桃山時代の慶長10年（1605年）頃に岐阜県土岐市周辺で始まり、元和年間（1615年-1624年）まで主に美濃地方で生産された陶器です。これは美濃焼の一つで、基本的には志野焼に続いて製作されたものです。桃山時代に作られた織部の茶陶（鉢、茶碗、向付、水指など）は、日本独特の深い美しさと気品を備えています。

織部焼の魅力は、多様な器種や豊富な形状にあります。器種には、茶碗や水差、皿などがあり、文様も風景や動植物などが生き生きと描かれています。特に緑釉と鉄絵の文様は、抽象的で現代美術にも通じるものです。そして全体に緑がかったデザインが特徴的です。この「緑」の色合いは、釉薬の調合だけでなく、焼成の過程で生まれるものです。窯での焼成によって、さまざまな緑色に変化し、器ごとに異なる釉薬の流れが「変化の美」を生み出します。濃淡の異なる緑が一体となった織部焼の器は、見る人の想像力をかき立て、森や山の風景のように映ります。この豊かな「けしき」が、日本人ならではの美意識を反映し、破格の形を持つ茶碗「沓茶碗」を生み出しています。

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