森陶岳の略歴（Mori tōgaku）

1937年	岡山県に生まれる
	岡山大学教育学部卒業
1962年	作陶を志す
1969年	日本陶磁協会賞受賞
1972年	大窯計画に着手
1980年	相生実験窯焼成・寒風大窯築窯
1996年	岡山県指定文化財保持者に認定
2002年	日本陶磁協会賞の金賞受賞
2005年	文化庁長官表彰
2006年	紫綬褒章受章

備前焼の世界で、誰よりも壮大な挑戦を続けてきた陶芸家・森陶岳氏は、昭和12年に岡山県で生まれました。岡山大学教育学部を卒業後、昭和37年には作陶の道に進む決意を固めます。

彼の活動の中でも特筆すべきは、なんといっても「大窯」への挑戦です。昭和47年にはその構想を始め、昭和55年には実験窯での焼成、同年には牛窓町寒風（さぶかぜ）に大窯を築き、57年には初めての焼成に成功します。昭和58年には、全長53メートルという規模の大窯を築き、60年、63年、平成6年、平成11年と、合計4回の焼成を実現させました。

「古備前を再現したい」というだけではありません。森氏の目指すのは、何百年経っても感動が伝わる“生きた波動”を持つ焼き物。だからこそ、素材の土にはこだわり、佐用町の山奥から、清らかな水と寒冷な気候のもとで丹念に砕いた土を用い、成形には緻密な計測のうえでの紐作りを徹底しました。

平成11年には、4年もの準備期間と2か月の焼成を経て、渾身の作品を完成させます。しかし、陶岳氏の挑戦はまだ終わりません。彼はさらに規模の大きな長さ90メートル、幅6メートルにも及ぶ新たな大窯の建設に取りかかっており、焼成には3か月を要する予定。平成21年の窯出しを目指して準備を進めていました。

その功績は広く評価され、日本陶磁協会賞や山陽新聞文化功労賞などを受賞。岡山県指定文化財保持者として認定され、日本工芸会正会員としても活動しています。偏前六姓の一つである森家を継ぎ、備前焼の伝統と革新を体現する存在として、今日もなお注目を集めています。

森陶岳氏の仕事は、ただの焼き物づくりではありません。それはまさに、時間と精神と自然との対話。千年先にも通じる焼き物の「波動」を求めて、炎と向き合い続ける彼の姿には、静かな情熱が宿っています。

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