加藤伸也の略歴（Katō shinya）

1940年	愛知県に生まれる
1964年	東京芸術大学彫刻家卒業。加藤土師萌・藤本能道・田村耕一に師事
1968年	瀬戸に帰郷し、父と共に作陶
1969年	日本伝統工芸展入選。以後多くの入選を重ねる
1996年	5代加藤作助を襲名
1998年	織部・黄瀬戸の愛知県無形文化財に認定
2013	瑞宝小綬章受章

昭和15年、愛知県に生まれた加藤伸也さんは、東京芸術大学で彫刻を学んだ異色の経歴を持つ陶芸家です。大学院では陶芸を専攻し、加藤土師萌、藤本能道、田村耕一といった名だたる師に学びました。その後、東京芸大の陶芸講座副手を辞し、ふるさと瀬戸の赤津にある作助窯に戻って作陶の道を歩み始めます。

作助窯は、瀬戸の陶祖・加藤景正を祖とする由緒ある窯元。その系譜は27代、赤津に分派した加藤政高から数えても11代目にあたるという、長い歴史と伝統を誇る家系です。平成8年には、父・四代作助の死去に伴い、五代作助の名を襲名しました。

彫刻を志した加藤さんは、父とは異なる現代的な感性を持ち、伝統技法に自分らしいアレンジを加えた作品づくりを続けてきました。織部や黄瀬戸といった釉薬を用いながらも、彫刻的なフォルムや知的で都会的な佇まいを追求。とくに条紋象嵌に織部釉を掛けた作品では、伝統と個性の融合が見事に表現されています。

中でも印象的なのは「弥生茶碗」と名付けられた作品。東京の地下鉄工事で掘り出された、鉄分を多く含む土を使い、透明釉を掛けて焼成したこの茶碗は、淡いオリーブ色に発色し、どこか青磁を思わせる清涼感があります。素材への目の付けどころと現代的センスが光る逸品です。

彼が大切にしているのは、「使ってもらえる茶碗」を作ること。ただ鑑賞されるだけではなく、手に取られ、使い込まれてこそ真価を発揮する器を目指してきました。そこには、「いかに個性を込めるか」という問いと向き合い続ける誠実な姿勢があります。

「茶道具の世界は、知りすぎているからこそ踏み込めない領域だった」と語る伸也さん。その作品は、決して主張しすぎず、けれど確かな存在感を放ちます。都会的で知的、そして“さりげないけれど泰然”とした風格──まさに、伝統を背負いながらも、今を生きる陶芸家としての品格を感じさせるのです。

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