金田鹿男の略歴（Kanada shikao）

1938年	茨城県の浄土宗弘経寺の次男として生まれる
1966年	松井康成に師事する
1967年	取手市に築窯し独立
1974年	伝統工芸武蔵野展、伝統工芸新作展、日本伝統工芸展、茨城工芸展に継続的に出品・入選
2001年	全国三島茶碗展に招待出品
2021年	死去

茨城県取手市に窯を構える陶芸家・金田鹿男氏は、1938年に生まれました。生家は、600年以上の歴史を持つ古刹・弘経寺で、父はその二十九世住職を務めていた人物です。そんな由緒ある寺に、後の人間国宝・松井康成氏が学生時代に下宿していたことが縁となり、金田氏はやがて陶芸の道へと進むことになります。

陶芸を志した動機は、「泥だらけになって自分を鍛えたい」という純粋な精神的・肉体的な修行への憧れでした。当初は茶碗一筋で、特に喜左衛門井戸や有楽井戸に強い感銘を受け、全国の美術館を巡って名碗を研究したといいます。その後、師・松井康成の作風とは異なる道を選び、金田氏が追い求めたのは李朝陶器の魅力に根差した刷毛目・粉引・象嵌三島の世界でした。

なかでも三島では、短く切った鉛筆状の丸棒に模様を彫り、それを土の上で転がして文様を刻む「転がし象嵌」を多用。菊花流水文をはじめとする小紋柄は、まるで江戸小紋のように繊細で、整然としたリズム感と美しい色調が器に穏やかな気配を与えています。その手仕事には一切の妥協がなく、緻密な象嵌技法を通じて、現代的な感性と李朝の伝統美が見事に調和しています。

1974年には取手市に築窯して独立。以来、伝統工芸武蔵野展や日本伝統工芸展、茨城工芸展などに継続的に出品・入選を重ねてきました。2001年には全国三島茶碗展に招待出品され、その存在感を一層高めます。現在では日本工芸会正会員、茨城工芸会会員として活動を続け、毎年、弘経寺での恒例作陶展も開催しています。

「焼きものは茶碗に始まり、茶碗に終わる」と語る金田氏の作陶は、井戸茶碗から三島手まで、幅広くありながらも常に一本の芯が通った世界観があります。その真摯なまなざしの奥には、伝統を見つめながら、次代に向けて静かに挑戦し続ける陶芸家の姿が見えてきます。

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