鎌田幸二の略歴（Kamada kōji）

1948年	京都府に生まれる
1971〜1977年	京都府立陶工訓練校 指導員を務める
1980年	伏見深草の自宅に築窯
1987年	日本工芸会近畿支部展にて京都府教育委員会 教育委員長賞受賞
1988年	清水卯一伝習者養成研修会に参加
1997年	ニューヨークで二人展を開催

天目釉（てんもくゆう）――茶碗の中に“宇宙”を宿すともいわれる、この神秘的な釉薬に、早くから心を奪われた陶芸家がいます。それが、京都出身の鎌田幸二氏です。

昭和23年に京都府で生まれた鎌田氏は、京都府立桃山高校を卒業後、清水正氏に師事。京都府立陶工訓練校の専攻科を修了した後、昭和46年から52年にかけては同校の指導員を務めました。その間も研鑽を積み、やがて自宅に窯を築いたのが昭和55年のこと。天目釉に本格的に取り組み始めたのは、24歳の頃、陶芸を志してわずか4年目の若さでした。

当時は薪窯での焼成が中心で、研究の場は河井寛次郎邸の鐘渓窯や、そのすぐそばの鐘鋳窯。思うように焼けるかどうか分からない、まさに「計算できない面白さ」が、天目釉の魅力だと語ります。

その後、薪窯を焚けなくなってからは、京都・伏見深草の自宅にガス窯を築き、さらに独自の天目表現を追求。油滴天目、禾目天目、柿天目、河南天目、黄天目など古典的な釉薬に加え、翠青天目・銀漿天目・紫紅天目といったオリジナルの釉技を開発してきました。京都府の収蔵作品にも選ばれた「窯変銀漿天目飾壺」や「翠青天目紅彩大鉢」は、まさにその集大成といえるでしょう。

京都は陶土を産しない土地。そのため原料屋から仕入れた土を釉薬に合わせて独自にブレンドし、何度も焼成を重ねるという複雑な工程を経て、彼の作品は生まれます。一度目の本焼で黒く上がった器を、再度焼成し、時に三度、四度と焼くことで、深く豊かな景色が器面に現れてくるのです。

鎌田氏が大切にするのは、“茶碗の見込み”＝内側の造形。「内が決まれば、外が決まる」と語り、天目茶碗においては、お茶をたてたときの“映り”の美しさを何よりも重視します。だからこそ、姿もきりっと品格があり、泥臭さのない清潔感が必要だといいます。

玄妙な斑文、妖しく美しい兔毫斑（とごうはん）。まるで宇宙を手にするような天目の器たち。鎌田幸二の創り出す世界には、静かな情熱と、尽きることのない探究心が息づいています。

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