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藤本能道の略歴 (Fujimoto yoshimichi)

1919年1月10日東京に生まれる
1941年東京美術学校工芸科図案部卒業、加藤土師萌に師事
1946年日展、国展に初入選
1956年日本陶磁協会賞受賞
1965年日本工芸会東京支部展受賞、ジュネーブ国際陶芸展銀賞受賞
1963年東京藝術大学助教授(のち教授)
1973年東京都青梅市梅郷に築窯する
1986年重要無形文化財「色絵磁器」保持者に認定
1991年勲二等旭日重光章受章
1992年5月16日死去。享年73

藤本能道は、富本憲吉と加藤土師萌に師事し、その色絵磁器の伝統を受け継ぎつつも、独自の技と作風を追求しました。彼は従来の日本の色絵にない中間色の絵具を積極的に採用し、白磁の素地に釉薬の色を重ねることで、絵画のような繊細な色調と柔らかな質感を色絵に表現しました。

色絵磁器の第一人者である藤本能道の創作活動は常に模索と探求の連続でした。その過程で、「釉描加彩」という新しい技法を65歳を過ぎてから生み出しました。この技法は、複雑な色調や立体感、奥行きの表現を可能にし、中国明時代に完成された伝統的技法に新たな局面をもたらしました。

そして1986年、藤本は「色絵磁器」の重要無形文化財保持者に認定されます。彼の業績は20世紀の日本陶磁に新たな色絵表現を切り開き、近現代の陶芸界に大きな足跡を残しています。

色絵磁器について

色絵磁器は、磁器の表面に赤・黄・緑・紫などの色絵具で文様を描く技法です。伝統的な色絵具は、酸化金属と「白玉」と呼ばれるガラス粉の一種を調合して作られます。この技法は中国の明・清時代に発展し、特に江西省の景徳鎮で優れた技術が見られました。万暦期の五彩や嘉靖期の金襴手が有名です。

色絵磁器は、透明な釉薬をかけて本焼きした後に絵の具で模様を描き、約800度の低温で焼き付けたものを指します。伝統的な上絵の具は、「鉄」「銅」「マンガン」「コバルト」などの金属酸化物と「白玉」と呼ばれる溶媒剤を調整して作られます。

上絵の具だけで彩られたものは錦手、下絵付けと併用される場合は染錦と呼ばれます。また、さらに金・銀彩を加えたものは金襴手と呼ばれ、その豪華絢爛な姿は江戸中期から現代まで人々を魅了しています。

色絵磁器で重要無形文化財(人間国宝)に認定されたのは、富本憲吉、加藤土師萌、藤本能道、十三代今泉今右衛門、十四代今泉今右衛門、十四代酒井田柿右衛門の6人です。

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