仏教では、それ以外の宗教の神々が取り入れられて、仏法を守る神とされている。インドの歴史は非常に長く、仏教の興隆以前に、少なくとも、三○○○年の歴史があり、その時期におこなわれていたバラモン教と
それに反対する自由思想家たち、いわゆる沙門の実践法があり、仏教はその成立過程で、それらの宗教の観念と神々を少なからず取り入れて、仏法の守護神に変えたのである。それを天部、神将という。まず、天部から説明すると、何々天と「天」の付くものがそれで、俗形のもの、武装のもの、冠を頂くも のなど各種に分かれる。
もっとも代表的なものは、四天王である。仏殿内の仏像を安置する場所を須弥壇というが、その四方を守護するのが四天王である。東方= 持国天、南方=増長 天、西方=広目天、北方=多聞天というふうに配置され、広目天は巻物と筆を、多聞天は槍と小塔を手にもつ。
天部でわれわれに親しいのは毘沙門天、梵天、帝釈天、吉祥天、弁才天、伎芸天、鬼子母神、大黒天、歓喜天、それに、天と付かないが、金剛力士、天竜八部衆といったところだろうか。それらを簡単に解説しよう。
毘沙門天 多聞天のこと。現世利益信仰の対象。そして単独に俗神化されている。梵天帝釈天・四天王より上位の一対の守護神で、 奈良時代には、もっぱら、仏像の両脇侍として尊ばれた。のちには、十二天のうちにふくまれる。吉祥天鬼子母神の娘で、毘沙門天の妃、福徳を授ける美しい女神。弁才天衣食住や財宝など多くの幸福をもたらす女 神。琵琶をもち、音楽の神でもある。後に七福神の一つとなる。
伎芸天文字どおり、伎芸の才能をもつ女神。鬼子母神 正式には、訶利帝母という。安産の女神。大黒天幸福、財宝をもたらす神。七福神の一つ。 歓喜天象頭人身の立像で、災難を除く諸願成就の神。
金剛力士武器である金剛杵を持ち、仏敵から仏法を護持する天部像。本来は、執金剛神と呼ばれていたが、寺門や仏壇の左右に分かれて配置されるようになって、通称、仁王として親しまれている。
天竜八部衆 釈迦三尊の眷属として従う八衆の鬼神である。単に、八部衆とも言う。天、竜、夜叉、乾 蘭姿、阿修羅、迦楼羅、緊那羅、摩喉羅迦。仏像として作られるときには、必ずしも、この通りではない。天・竜・夜叉を三尊というが、われわれに馴染深いのは、阿修羅であろう。元来、悪魔の意であったアシュラは、仏教では、その威力によって敵を寄せつけぬ守護神となった。血なまぐさい戦闘の場を修羅場といい、 阿修羅のごとく、といった形容もある。
夜叉も荒々しい鬼神の意味でよく使われる。夜叉女ともいい、魅力的な女神でもある。八部衆には属さないが、安産の神である水天、疾走する軍神である韋駄天、死者の生前の罪を裁く王閻魔なども、日本人の信仰生活に生きている。閻魔は十王の一つと数えられてもいる。
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