小野道風の略歴　(Onono michikaze)

寛平6年（894年）	尾張国春日井郡上条（現在の愛知県春日井市松河戸）で生まれたとされる
延喜5年（905年）	弱冠12歳にして大嘗会の屏風の色紙形を書く
延長5年（927年）	大納言・藤原清貫の60歳の賀にあたり、小野忠則とともに金銀泥下絵の色紙に『法華経』『薬師経』などを書く
延長6年（928年）	内裏の屏風六帖に、大江朝綱の漢詩を浄書。なお、この下書が『屏風土代』である。
承平2年（932年）	大嘗祭において屏風の色紙型を揮毫
承平3年（933年）	康子内親王の裳着で屏風の色紙形を揮毫
天慶5年（942年）	醍醐寺釈迦堂の門額を揮毫
天慶9年（946年）	右衛門府の官人が職務を怠り会昌門を開かなかったとして処罰され、右衛門佐であった道風は贖銅2斤の刑に処される
天暦7年（953年）	朱雀院御周忌の一切供養に際して『目録之外廿六巻』を分担執筆
天徳2年（958年）	乾元大宝が鋳造されることになったが、眼病の進行により細字を書くことが困難となる
天徳4年（960年）	内裏が火災によって焼亡、翌年再建された内裏の承明門額や殿舎の額を揮毫
康保3年（967年）12月27日	死去。享年73

道風は生前から能書家として非常に評価が高く、宮廷や貴族の間で「王羲之の再生」と賞賛された。『源氏物語』においては、道風の書について「現代風で目を引くほど美しい」と表現されています。彼の死後、評価はさらに高まり、「書道の神」として祭られるほどになりました。

空海の書に対しては、彼の筆力と筆勢を重視するスタイルとは異なり、道風は文字の整然とした形と調和を重要視したため、空海が筆の額字を批判したことが記録されています。これは、道風の書が天皇や貴族に愛され、尊重されたことに由来すると考えられます。

晩年の道風は健康を害し、中風に悩まされることになります。65歳頃から視力が衰え、67歳頃には言葉の不自由さも感じるようになりました。この時期の彼の書は以前のような流れるような線ではなくなり、後世では「道風の古い筆」と呼ばれるようになりました。

花札にも描かれた「書道の神」小野道風

道風が書道をあきらめかけていた時、ある雨の日に柳の木に何度も飛びつこうとする蛙を見かけました。当初、道風は柳が遠すぎて蛙が飛びつけるはずがないと思っていましたが、突然の風が柳を曲げ、蛙が成功するのを見て、自分も努力が足りないと感じ、書道への意欲を新たにしました。この話は江戸時代中期の浄瑠璃『小野道風青柳硯』で広まり、その後、第二次世界大戦前の国定教科書にも掲載され、多くの人々に知られるようになりましたが、その史実性は不明です。

このエピソードは多くの絵画の題材としても採用され、花札の「柳に小野道風」という札のデザインにもなっています。また、現在は春日井市にある東名高速道路・名古屋第二環状自動車道のカントリーサインの絵柄としても使用されています。

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