岡田米山人の略歴　(Okada beisanjin)

米山人の詳細な生涯については多くが明らかになっていません。彼の出生地に関しても大阪、神戸生田村、丹波八木の諸説があり、両親や兄弟、先祖に関する情報も不明です。

若年期には兵庫県加西市西剣坂にある剣坂村の庄屋、安積喜平治に庇護され、安積家で暮らしました。日々、米をつく傍ら、読書や詩作に励み、その才能が評価されることもありました。成長すると、大坂での新たな生活を始める決意をし、喜平治の支援を受けて米屋を開業しました。彼の画号「米山人」も、この稼業が由来です。

大坂に移住した後も、米臼を回しながら書画に親しむ日々を送り、独学で中国文人画の精髄を学びました。評判を聞きつけた藤堂高朗にも注目され、1782年には伊勢国藤堂藩の蔵屋敷に移住し、画室「正帆」を構え、多くの文人墨客と交流しました。米屋は息子半江に引き継がれました。65歳で下役を辞し、半江に職を譲り、天満橋近辺で隠居生活を送りました。安積家の障壁画を半江と共作し、喜平治への恩返しを果たしました。

晩年は飲酒や煎茶を楽しみ、75歳で妻を失ったショックから、創作活動が一層盛んになりました。77歳で亡くなり、その蔵書や画作は息子に遺されました。彼の学問と芸術は独学であったため、収集した書画や文献に対するこだわりが息子に引き継がれました。

文人たちとの交流と画風

米山人が画業で名声を得ると同時に、文人たちとの交流を積極的に行いました。彼の親友であった木村蒹葭堂の『蒹葭堂日記』には、米山人の名が数十回登場しています。この日記から、蒹葭堂が中心となって形成された文人ネットワークを通じて、米山人が多くの文人と親しくなったことが伺えます。彼の自宅「正帆」は、田能村竹田、頼山陽、浦上玉堂、春琴、篠崎小竹、如意道人など、多くの著名文人が訪れた場所でした。

また、彼の隠居先である源八渡しは、中西石焦、十時梅厓、海量上人、森川竹窓、鼎春嶽、藤堂高基、秦宗春といった多くの文人が集うサロンとなっていました。特に、田能村竹田の若き才能を見抜き、励ましたとされ、竹田も米山人を敬愛し、彼の画風を「拙さに古さを感じ、疎さに厚みがある。渾朴で深い味わいがある」と評価しています。これは、米山人の作風が年齢とともに円熟し、大胆で個性的な表現と鮮やかな色使いで注目を集めていることを示しています。

米山人は明清元代の中国文人画から大きな影響を受けており、米芾、黄公望、倪雲林、沈石田、文徴明、董其昌、藍瑛、伊孚九、葉大年などの画風を研究し、その精神を自らの画に取り入れていました。木村蒹葭堂、十時梅厓と共に大坂の文人画の重鎮として位置づけられています。

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