中国陶磁器の用語

【青蕎麦】

中国清朝時代の焼物の代表的釉色の一つで、茶葉末ともいう。鉄質珪酸塩の結晶作用によってやや黒味がかった渋味のある緑色の発色である。

【阿古陀形 あこだなり】

阿古陀瓜 (金冬瓜) の形に似ているものをいう。中国明代の染付の葡萄栗鼠文壺などにその典型を見る。

【赤玉手 あかだまで】

中国明代末から清朝初にかけて福建省で焼かれた磁器。赤と緑の釉色彩で幾何学文様や龍文や花模様などを描き、赤丸を加える。いわゆる呉須赤絵の一種である。

【イエローホーソン=yellow hawthorn】

素三彩の中で地色に黄釉を使用し、山査子に似た樹を画題にしたものをいう。また、五彩の黄釉地の染付のあるものをいう。

【印花文】

土器や陶器の生素地に施す型押文様の一種で、小さな花輪・点などの印を広範囲に押印したもの。印文、押印文などともいう。印花文の歴史は古く、中国戦国期や朝鮮古新羅の土器にその例を見るが、特に朝鮮李朝初期の粉青沙器に見る印花文は多種多様で、日本人はこれを三島手などと称して愛玩する。

【影青 いんちん】

釉中の微量の鉄分が還元炎によって薄い青味を呈する白磁のこと。青白磁ともいう。北宋時代景徳鎮で焼かれたのが最初で、その後南宋時代には中国の各地で焼かれた。現代でも焼成されており、新物が紛れることがある。

【兎糞 うさぎくそ】

中国産の下等な呉須のことをいう。鉄分その他の不純物を多く含むコバルト釉で、濁った藍色を呈する。

【回青 かいせい】

中国明時代にトルコから輸入された青花(染付)用の酸化コバルトを含んだ顔料。蘇麻離青ともいう。鮮やかな青色であり、嘉靖年製(1522~54)の染付が有名である。

【唐絵 からえ】

中国から伝わった絵。また、中国画の画題や技法をまねて日本人が描いた絵のこと。大和絵がこれに対する。

【唐草文様 からくさもんよう】

蔓性の草を幾何学的な文様にしたもの。古代エジプトのロータス(蓮)の連続文様が最も古く、それがアッシリア、ギリシャ、ローマ、ペルシャへと広まり、形を変化させながら中国を経て日本に入ってきた。唐草には主体となる植物から、蓮華唐草、パルメット唐草、葡萄唐草、宝相華唐草、牡 丹唐草などいろいろの文様があり、仏教美術の装飾として、各種の工芸装飾として、また、生活用具にまで広く用いられてきた。

【唐子文 からこもん】
陶磁器の典型的絵柄の一つで、中国の子供の遊ぶ姿を描いたもの。中国清朝時代の染付や高麗青磁 などに多く見る。日本でも平戸焼に使われる。童子文ともいう。

【唐様 からよう】

中国風の様式をいう言葉であるが、特に元・明風の書体や鎌倉時代に禅宗とともに宋から伝わった建築様式をいう場合がある。和様がこれに対する言葉。

【砧青磁 きぬたせいじ】

中国南宋時代の竜泉窯の粉青色の上手の青磁のこと。砧形の花入れが典形であったことから日本の茶人が呼称したといわれているが、諸説がある。

【玉琮 ぎょくそう】

古代中国の周から漢代にかけて作られた中央に縦穴のとおっている筒形の玉。 表面には精細な文様を彫り、上下の穴の径がわずかに異なる。兵を出すときの割符としたり、地を祭るときの祭器、また、王の権威を象徴する説などさまざまであるが、墳墓から出土するものであり、実際の用途は不明である。

【玉璧 ぎょくべき】

薄く平らに磨いた環状の玉。古代中国の周から漢代にかけて祭器・宝物・装飾品として愛好された。表面に渦雲や穀粒子などの文様を彫っている。

【鉅鹿 きょろく】

中国河北省鉅鹿鎮は北宋大観二年(一一〇八)に漳河の大氾濫で埋没したが、一九二〇 年代に発掘され、そのとき大量の磁州窯陶器が出土した。特に白無地の陶器が大半を占めていたため、この出土品以外でもこの手の磁州窯陶器をすべて鉅鹿と呼ぶ向きがある。

【景徳鎮 けいとくちん】

中国を代表する陶業の中心地。 江西省東北部に位置する。開窯は晩唐の9世紀頃とされ、白磁や青磁 を焼いたが北宋時代に影青を完成させて中国の代表的窯場となった。元 時代には青花(染付)を創始してさらに隆盛し、明・清朝代には赤絵をはじめ各種の加飾法を開発し、官窯も設けられて中国第一の製陶地となり、現代に至って居る。

【磬幣 けいへい】

磬は中国古代の楽器。 石や玉で作った「へ」の字形の打楽器で、台に吊して打ち鳴らした。磐幣はこの砦の「へ」の字形の青銅で鋳造した貨幣で、戦国時代から漢代にかけて使 用された。すべて小さな孔をもち、陽刻の線文様を有するものである。

【建蓋 けんさん】

中国の宋から元時代にかけて福建省の建窯で焼かれた黒釉系の天目茶碗を総称して建蓋という。陶磁の飲茶の流行、いわゆる闘茶にこの建窯の黒釉系の茶碗が適していたので宮廷用にも提供された。器の底部に「供御」とか「進盞」の文字が彫られているのがそれである。

【硯屏 けんびょう】

硯の前に立てて使う小さな屏風に似た文房具で、風塵を防いだり、墨水が弾けるのを防ぐ役目とされるが、飾り物としての意味合いが強い。青磁 や染付の磁器製・銅・唐木 (紫檀や黒檀)製などで、中国宋代に始まり、明・清代に流行した。

【黒陶 こくとう】

中国先史時代 (竜山文化期)の黒色土器。轆轤成形で、表面は研磨され漆黒色を呈する。

【呉須 ごす】

中国で天然に産した酸化コバルトを含んだ顔料のことで、地名をとって呉須(州)と呼 んだ。陶磁器の絵付にこれを用いたのは元の時代からである。鉄分を含むのでやや黒味を帯びた青に発色する。

【呉須赤絵 ごすあかえ】

中国明代後期の万暦年間(1573~1619) から清朝初期に焼かれた呉須手の五彩磁器。主として濃厚で鮮明な赤と緑色の絵具を使って奔放な文様を描いた民窯の磁器だが窯は判明していない。

【呉須手 ごすで】

語源は判然としないが、中国明時代後期から末期にかけて中国南部の福建・広東地方で焼かれた民窯の磁器で、呉須赤絵、呉須染付、青呉須、瑠璃呉須、餅花手などいろいろの作風のものがある。いずれも自由奔放な作風を示すが、窯の場所は判然としない。スワトウ・ウェアと同じ。

【古染付 こそめつけ】

中国明代末期から清朝初期にかけて、景徳鎮の民窯で焼かれた粗製の染付磁器。皿や碗・鉢・瓶類であるが、虫食いと称する口縁部の釉と、山水、人物、花鳥など 身近なものを画材にした軽妙なタッチの絵画風に描いた図柄が特徴である。この一見粗雑とも見える自由闊達な絵付を茶人や数寄者は大いに珍重した。生産地の中国に比べ、はるかに数多くの遺品が日本に残されていることと、明らかに茶器や懐石用の器を意識したと思われる器があることから、古染付は日本からの注文品であったとする説がある。どうしてこの手の染付に「古」がつくのかは不明である。

【古代裂 こだいぎれ】

古代より伝世された裂、また、古墳や遺跡から発掘された裂を総称して古代裂という。インカの裂、エジプトのコプト織、中国古代の染織品、法隆寺や正倉院に伝わった飛鳥・ 天平裂などが代表的なものである。上代裂ともいう。

【官窯 かんよう】

宮廷御用の器を専門に焼く窯のこと。民窯に対比する。中国では北宋時代から、朝鮮では高麗朝時代から制度化されたが、日本では江戸時代の大名が制度化した藩窯がこれに当たり、九州佐賀鍋島藩窯が有名である。

【黒蕎麦 くろそば】

中国清朝乾隆期(1736~1796)の黒味を帯びた茶葉末釉をいう。

【磬 けい】

古代中国の打楽器の一種で「へ」の字形の石や玉製の板を吊り下げ、たたいて音を出した。仏具として用いる砦は青銅製または鉄製で、日本では奈良時代以降、勤行の際に架に掛 けて打ち鳴らした。

【鷄冠壺 けいかんこ】

中国遼時代の独特の造形の陶器の壺で、契丹族が伝統的に使用してきた革袋の容器を模したものである。壺の形式は多種にわたっているが、器の上部に鶏冠に似た装飾を持つ壺が代表的であることからこの種の壺全体を鶏冠壺と呼んでいる。

【古赤絵 こあかえ】

中国明代景徳鎮の民窯で作られた赤絵磁器。特に正徳年間(1507~1521)から嘉靖年間(1521~1566)にかけて最盛期であった。古赤絵の特徴は青花を下地に用いない点で、明末清初の赤絵、いわゆる南蛮赤絵 と区別する。

【中国書画】

北宋 郭熙 かくき (1023-1085頃)。字は淳夫。河陽温県(今の河南省に属す)の人。神宗の熙寧年間(1068-1077)に図画院芸学(画院画家の職名)となり、のちに翰林待詔直長に任じられた。

趙佶 ちょうきっ (1082-1135)。北宋の皇帝徽宗である。

米友仁 べいゆうじん  (1086-1165)。字を元暉、晩号を懶拙老人といい、出身地は太原で、襄陽に遷り、潤州(今の江蘇鎮江) に居を定めた。

北宋 巨然 きょねん 宋初の画家。江寧(今の南京)の人。開封の開元寺の僧であった。山水画は董源を継承している。

元 趙孟類 ちょうもうふ (1254-1322)。字を子昂、号を松雪道人、水晶 宮道人といい、呉興(浙江湖州)の人である。官は翰林院学士承旨(史書の編纂などをつかさどる官)に至った。

五彩魚藻文壷

 「五彩魚藻文壷」ごさいぎよそうもんこ。 明・嘉靖 (1522~1566年) 景徳鎮窯  口縁が厚く、胴が大きく豊 かに張った嘉靖期にしばしば みられる形の壷。文様は釉下彩の青花と釉上彩の上絵を併用する景徳鎮官窯の五彩の手法で描かれている。胴に描かれた蓮花、水藻のなかを泳ぐ魚の文様は、元時代以来連綿と用いられもの。紅色の鯉の魚体に塗られたオレンジ色は、黄色の絵具の上に紅色を重ね塗りしてあらわしている。削りくばめた底裏中央に青花で「大明嘉靖年製」の楷書銘を記しているが、その周囲の底裏は無釉。

青花黄彩 龍 蓮唐草文盤

「青花黄彩 龍 蓮唐草文盤」せいかこうさいりゆうはすからくさもんはん。 明・嘉靖(1522~1566年) 景徳鎮窯 明時代の大盤のなかでも最大径の作品のひとつ。見込みに正面向きの立龍、側面に4匹の龍をそれぞれ蓮唐草文を 配して描いている。外壁にも蓮唐草文。文様の地となる部分には上絵の黄彩が塗られて色どりを加え、華やかな調子に仕上げられている。外壁口縁下黄彩、透明釉の釉下の方郭内に「大明嘉靖年製」の青花楷書銘を横1行書き。底裏は無釉で話紅色(赤土色)。

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