仏像について

【赤金】

金と銅の合金。 装飾品や鍍金に用いる。

【後金 あときん】

仏像などで、その製作時に施した本来の金彩色や鍍金でなく、後世に施した金彩色や渡金のことをいう。

【アミュレット= amulet】

古代エジプト人の護符のことで、神像やウジャットの眼、スカラベ、動物(猫や 河馬)などいろいろの種類のものがある。ブロンズ、ファイアンス、石、ガラスなどによって作られた。

【アムラッシュ】

カスピ海の南西部、イラン高原の北部に連なるエルフールズ山脈の山岳地帯の中心地アムラッシュの巨大石墓から出土した一群の副葬品をアムラッシュと称している。紀元前九世紀から紀元前八世紀頃のものと推定され、粘土製の遺物が主流であるが、技術水準の高い青銅製の遺物も多い。これら遺物の特徴は人物や動物の非常に独創性に富んだ表現意匠であり、鹿、山羊、瘤牛、一角獣などのデフォルメされた意匠は芸術性が高く魅力的なものである。アムラッシュの芸術は次の時代のイラン高原の芸術、ルリスタン青銅器に多大の影響を与え、南ロシアのコーカサス地方のスキタイ芸術、そして遠く極東のオルドス芸術にまでその影響をおよぼしつつ、次のアカイメネス朝の金属器芸術へと受け継がれていった。なお、アムラッシュは土地の名前であって、その遺跡名はマルリクである。古代オリエント物の古美術商は出土地が不明なこの手の類似品をすべてアムラッシュと称する向きがある。

【倚像】

椅子や台座に腰掛ける姿の仏像。倚坐像ともいう。坐には両足を揃える並脚倫生と交差させる交脚坐がある。

【板仏】

仏像の形に切り取った板に彩画したもの。また、銅版に打ち出した仏像をいう。

【陰刻 いんこく】

器物や仏像などの表面に文様や銘文を凹ませて彫り込む技法。陽刻に対する言葉。線の表し方から点刻・線刻・毛彫・蹴彫・片切彫などの技法がある。

【浮彫 うきぼり】

形や模様が浮き上がって見えるように、平らな面を彫り込んで製作する彫刻技法。建造物や仏像の装飾に用いられ、薄肉彫・高肉彫・肉合彫などの技法に分けられる。丸彫に対する。

【烏金 うきん】

彫金に用いる黒色の金属。

【柄香炉 えごうろ】

法会の際に仏前で手にとり献香するための仏具で、手炉ともいう。長い柄のついた台座 の上に火炉を載せる形で、従来、平安時代に創案された日本独自のものとされてきたが、 近年、中国で唐時代の作例が出土し、中国源流説が強くなってきた。わが国では鎌倉時代以降の作例が多数知られている。

【江戸切子 えどきりこ】

江戸時代後期に始った江戸のガラス工芸のカットグラスは現在も東京の江東区を中心に製品を作り続けており、これを江戸切子という。江戸時代の切子製作は金属の棒状の工具に金剛砂(ざくろ石の粉末)を水につけ、手動でガラスを削る方法で行われていたが、明治時代に入りイギリス人技術者エマニエル・ホー プトマンによって回転工具によるカット技法が教授され、その後の江戸切子産業発展の礎となった。
大正・昭和年代には生産も一段と拡大し。昭和前期にはアールデコ 様式のモダンなデザインの色被せカットガラスの食器が人気を呼んだ。型態としては鉢・蓋物・花瓶・洋酒セット・グラス・盃など多岐にわたる。

【円空仏 えんくうぶつ】

江戸時代初期(一六三二~九五年)の修験僧円空の作になる仏像をいう。円空は美濃国中島郡中島村(現:羽島市)に生まれ、二十三歳で出家、尾張国高田寺で密教と修験道を学び、東北・蝦夷(北海道)に旅し、その後も奈良・志摩半島・北関東など諸国を行脚して生涯を終えた。その間活発な造像活動を行い、現在確認されているだけでも四千体以上の作品が遺されている。

【押出仏 おしだしぶつ】

鋳造した原形の上に薄い銅板を置いて、槌や鍵で打ってその姿を打ち出した仏像。同一の原形から多数の同一押出仏を作り、堂内の壁面や厨子の荘厳に用いたり、単独で厨子に入れて礼拝の対象にもした。懸仏の製作にもこの技法が用いられた。

【鬼桶 おにおけ】

漢字のことをいう。 また、男性の筆跡をもいう。女手に対比する語。
室町時代から作られた信楽焼の鉢。上の方に向かって広がっている形。 元来麻糸をときの道具であったものを戦国時代の茶人武野紹が水指しに見立てたという。「鬼」はある語を冠して異形、巨大などの意味に使われる。

【懸仏】

銅板、または木板に金属板を張った鏡板に、仏像を鋸や柄で取りつけ、上部の左右につけた鐶で吊して礼拝したもの。鏡板は円形が普通であるが、稀に方形や扇形もある。平安時代中期頃から作られるようになったが、最初は銅鏡や錫鍍金を施した銅板に仏像を鏨で線刻して表した。それが十二世紀中頃から尊像を押出仏にして立体的に表すようになり、さらに吊り下げるために環(耳)がつき、鋳造した仏像を取りつけるようになった。鎌倉時代は懸仏の全盛期で優品も多いが、南北朝・室町時代に入り環座・花瓶など装飾が加えられるとともに粗製なものも多くなった。なお、神像にもこの技法が用いられた。

【迦陵頻伽 かりょうびんが】

多くの教典に出てくる美音美声の鳥の名。特に『阿弥陀経』では極楽浄土に住む鳥とさ れる。上半身は菩薩の姿、下半身が鳥の姿で、翼をつけ、手に楽器や華籠を持つ姿で表される。仏教美術の代表的文様の一つとして仏殿の荘厳や仏具の意匠に用いられる。

【龕像 がんぞう】

石窟寺院の壁をうがった場所、また、石や木、象牙などを刳り抜いたところに諸尊像を彫刻して安置したものを龕像といい、その厨子部分を仏龕(ぶつがん)という。携帯もできる小型の仏龕は中央アジア、中国、日本、チベットに共通して多くの実例が見られる。

【ガンダーラ彫刻】

ガンダーラは現在のパキスタン北部、ペシャワール周辺地域を指す古名である。ガンダーラの仏像彫刻は一世紀前半に始まったと推定されているが、決定的な結論には至っていない。彫刻に使われた石材は黒・青色片岩や緑泥片岩が主で、千枚岩も使われた。また、後にストゥッコ像が盛んになった。彫刻の主題は単独の仏陀像、菩薩像のほか守護神像や仏伝図の浮彫などである。

【偈 げ】

仏典中の韻文。仏の功徳をたたえる言葉など四句からなるものが多い、偈頌(げじゅ)ともいう。

【化仏 けぶつ】

本来は、衆生の教化、救済のために仏や菩薩が、相手の気力や性向に応じた姿に身を変えた状態をいい、変化仏・応化仏ともいうのであるが、仏教美術では仏像の頭部や光背に配した小仏像を化仏と呼んでいる。巷間、化仏が単独の仏像、仏頭として流通している例は多い。

【高麗仏画 こうらいぶつが】

朝鮮半島の高麗朝時代に製作された仏教の礼拝画や写経の見返絵などをいう。高麗朝時代の仏教美術の中で最も優れたものとされるが、長い歴史に比べ、その遺例は非常に少なく、そのほとんどは十三世紀中頃から十四世紀後半の作とされている。高麗仏画の特徴は朱・緑青・群青を主調色とし、描線と文様に金泥を多用していることであり、多様で精密な描写も特徴である。また、文様として蓮華唐草円文が愛用されたのも、高麗仏画だけに見る特色である。

【鏡像 きょうぞう】

銅鏡に神像や仏像を線刻したもの。日本では平安時代中頃から作られたと思われるが、中国の北宋時代のものや朝鮮の高麗朝時代のものも現存する。

【玉眼 ぎょくがん】

仏像や高僧像などに現実感を与えるため、また、明王や天部像に迫力を持たせるために、水晶を嵌め込んだ眼をいう。平安時代末期からその例を見るが、鎌倉時代の写実的傾向と相俟って盛んになった。像の頭部を前後に割矧ぎ、あるいは面矧ぎにして内側に眼の形を刳り、水晶で作った眼を嵌め込んだものである。

【交脚像 こうきゃくぞう】

両脚を交差して倚坐する像。ガンダーラが起源とされ、王や神の坐像が仏像にも取り入れられた。シルクロード沿いに作例を見るが、中国では五胡十六国時代から北魏時代に弥勒菩薩として盛んに作られたが、次第に衰退し、唐時代以降はほとんど見られない。そのためか、朝鮮半島や日本では作例がまったくない。

【光背 こうはい】

仏や菩薩の発する光明を象徴して、仏像の背後に表されるもの。頭部の後の頭光と全身の後の挙身光がある。また、その形や意匠によって、舟形光背・火焔光背・放射光背・宝珠光背・飛天光背などの種類がある。

【金剛枡 こんごうしょ】

密教法具の一つで、形の把の両先端が鈷(切っ先)になっている金剛製のもの。古代インドの武器にその源流をもつ。把の両端の鈷の数によって独鈷杵、三鈷枡、五鈷枡、特異な形の羯磨などがある。密教では金剛枡の武器性が、心中の煩悩を打ち砕く象徴とされる。時代が古いほど鋭く武器性を表すが、時代が下るに従って武器性を失って象徴的な形姿になっていった。

【金銅仏 こんどうぶつ】

銅または青銅で鋳造した仏像に鍍金または金の箔押を施したものをいう。

仏像の種類

「最高位の如来」弥勒如来、阿弥陀如来、薬師如来、毘盧遮 那如来、大日如来

「天部」毘沙門天、梵天、帝釈天、吉祥天、弁才天、伎芸天、鬼子母神、大黒天、歓喜天

「天竜八部衆」天、竜、夜叉、乾 蘭姿、阿修羅、迦楼羅、緊那羅、摩喉羅迦

「神将」宮毘羅(子)伐折羅(丑)迷企羅(寅)安底羅(卯) 類爾羅(辰)珊底羅(巳)因達羅(午)波夷羅(未) 摩虎羅(申)真達羅(酉)招杜羅(戌)毘迦羅(亥)

「十三仏」不動明王 、釈迦如来 、文殊菩薩、普賢菩薩 、地蔵菩薩 、弥勒菩薩 、薬師如来、観世菩薩 、勢至菩薩 、阿弥陀如来 、阿悶如来、大日如来、虚空蔵菩薩